2012年 8月 の記事

ついに登場、ショパン本初の電子書籍専用書『ショパンの交友録』

ショパンと私」というwebサイトの管理人さんがサイトの記事をまとめて電子書籍にされてたようです。今日気付きました。
サイトのメインコンテンツである「人名録」を大幅に増補追記された内容となっており、そのページ数348ページ。(コンテンツとページ数が違っちゃってるみたいです)
まずはご出版おめでとうございます。これがたったの300円で読めるというのだから信じられない。もし紙に印刷して出版されたら、この10倍くらいの値段になるんじゃないでしょうか。良い意味で値段と内容が釣り合ってないですね。一読者としてはありがたい限りです。

さてこの『ショパンの交友録』ですが、ショパン本初の電子書籍専門書となるわけですが、この本が発行された意義はとても大きいです。今日はこのことについて書いてみます。

日本で電子書籍が普及しない理由について世間ではいろいろ言われておりますが、ビジネス面での話と実務面での問題がごっちゃになってて、結局「出版社の努力不足」とかなんとかでまとめちゃってる記事が多く見受けられます。

まず電子書籍とは何かについて。電子書籍専用のフォーマットのものと、既存の本をデータ化したものの区別がついてない人が意外に多いです。

電子書籍専用のフォーマットのものとはAmazonのkindleで読む為のazw形式のものや、iPhone/iPadなどで読めるePub形式のものがあります。(ショパンの交友録はePubです)
既存の本をデータ化とは自炊などと呼ばれ裁断→スキャンして画像化したものをいい、OCRをかけてPDF化したものなどが一般的です。

どちらもデジタル化された本ですが中身は全く違います。

これから電子書籍を発行するなら、本を制作した後、電子書籍専用のフォーマットで出せばいいでしょう。問題は過去に出版された本です。
私の経験で言えば、90年代半ばまでは厚紙にトレース用紙を敷いて鉛筆でレイアウトを書いたりしていました。つまり90年代以前の本はデータが無いということです。
ということは90年代以前の本は全く新しく作り直すか、本そのものを裁断・スキャンしてデータ化するしかありません。
さらにもっと古い著作権の切れた本は国立国会図書館がデータ化して公開していたり、有志がテキストに打ち直して公開している青空文庫などのサービスがあります。

まとめると
これから出る本・・・電子書籍専用のフォーマットで書き出し(azw、ePub他)
90年代以前の本・・・裁断してスキャン(PDF、jpeg)
著作権の切れた本・・・テキストデータ化(txt)

90年代以降から最近までの本はどうすんだって話ですがこれがなかなか厄介です。
売れなくなったものはともかく、この時代の出版物には売れ筋のものも結構含まれてます。
この時代、中途半端にいろんなページレイアウトソフトで作ってたりするんでボタン一つで簡単に書き出しってワケにもいきません。いわゆる今現在出版社が抱えてる悩みの種はこの辺りの事情も大きいんじゃないでしょうか。

本が出来るまでの流れ
出版社の編集部が本を作ってると思われてるかもしれませんが、ある意味それは正しくもあり間違いでもあります。

一例をあげると出版社の編集部が本の企画を考えて、著者が中身を書き、出来上がった原稿を元に製作会社がレイアウトして、印刷所が印刷・製本して本にします。本1冊作るのにいろんな人の手を通っているのです。
電子書籍にするには上の例で言えば印刷・製本をなくして、製作屋さんに作ってもらったデータを電子書籍フォーマットで書き出せば良いワケです。

ただ広告や芸能人等のページが多く含まれている雑誌だとちょっと事情が違います。この手の本は印刷所で最終的にチェックを入れる場合が多く(色校正)最終的なデータは印刷所にあることになり、これを電子書籍化するには製作屋からでなく印刷屋からデータを引き上げてデータ化しなきゃいけなくなります。写真集やカラー図版の多い本もこういうケースに当てはまるでしょう。
雑誌なんて電子書籍で手軽に読みたい、そう思ってる人も多いと思いますが、作る側からすると雑誌の方がむしろ面倒事が多いのです。 いっそのこと電子書籍専用の媒体を創刊しちゃった方が早いかもしれません。

電子書籍が普及しない本当の理由
さて、長くなりましたが結局本を電子化するといっても一筋縄ではいかないというのが、何となく分かって頂けたのではないでしょうか。出版社の努力不足と切って捨てるのは簡単ですが、売れるかどうか分からないコンテンツのものまで含めて何万とある媒体をデジタル化することは恐ろしい労力です。

仮に必ず売れる本があったとして、それのデータがどこにあるか探して、製作屋や印刷所からデータを引き上げて(もちろん有料)、そのデータをまとめて電子書籍化して、いったい幾らで売れば利益になるんでしょう。そしてその本はその時だけでなく売れ続けるようにするにはどうすればよいかという問題も残されています。

日本のiTunesStoeで売ってる本は電子書籍ではなく実はアプリだということはご存知でしょうか。iPhoneやiPadで読めるから電子書籍でしょって思ってる人も多いと思いますが違います。
これは利用者からすれば読める事には変わりないのであまり問題ではありませんが、出版社からすると宣伝やマーケティングといった大きな問題を含んでいます。アプリは毎日登録されていくので、古い本(古いアプリ)はどんどん埋もれていってしまうのです。だから漫画などのコンテンツは各1話ごとに分けて、少しでも長く目につくように登録したりと涙ぐましい努力をしています。これは書店だとありえない現象です。電子書籍(アプリ)をiTunesStoreで売るのも今はまだ大変な時代なのです。

電子の本の未来の姿
結論を言うと、電子書籍を普及させるには戦時中のように紙媒体の発行を規制するという方法もありますが、実際問題無理というか今のところ利用者にとって紙を規制するメリットはありません。

仮に一斉に紙媒体を止めて、強引に電子化したとして、みんなの家にある本が完全に電子と取って代わるのに何年かかるでしょう。10年?20年?たかだか15年前のワープロのデータも読めなくなってる今の現状を考えると、紙媒体をデータ化してしまうのは博打が過ぎる気もします。(50年後にiPadで本を読んでる姿を想像できますか?)

結局、紙を規制せずに電子書籍を増やすには「電子書籍専用の本を増やす」という方法が確実なのですが、ここで最初の話につながります。

この森村さんの『ショパンの交友録』のように、元がしっかりしたwebサイトのコンテンツであり、さらに追記増補された電子書籍が売れる時代になれば、将来的にはこういったコンテンツが増えていって電子書籍が普及するかもしれませんね。この本が発行された意義はとても大きいのです。

 

webサイト:ショパンと私
電子書籍販売wook(ウック):ショパンの交友録

ショパンのピアノ協奏曲を500回以上聴いた管理人が本気でオススメする録音ベスト3

私はこうみえて(どうみえて?)ショパンのピアノ協奏曲が大好物であり、レコードやらCDやらいろんな音源を集めているのですが、その数うん百を超えており、天井にまで届くCDラックの半分がショパンのピアノ協奏曲で埋まってるという変態です。変態です。

一般的にショパンのピアノ協奏曲の定番といえば、ツィメルマンの弾き振りやアルゲリッチのショパコン実況録音なんかがありますが、今回は私が本気でオススメするものをご紹介しようと思っております。

まえおきとして
クラシックの音源をオススメする際に私が常々感じているのが、本や雑誌を見ても何でみんなメジャーレーベルのものばかりオススメするんでしょうかね。まあ、薦めても手に入らないんじゃ意味ないじゃんってのは分かります。逆に定番だからメジャーなんだよっていうのも何となく。ただやっぱりオススメしたいものの中には手に入りにくいものが含まれてても仕方ないと思うんですよね。

一応お断りしておきますと、私のオススメはそういうメジャー・マイナーに関わらずに選びます。もちろんメジャーな人をわざと避けることもしていません。あくまで自分の好みに正直に←、この原則だけは守ります。

ただし、古い録音と最近の録音は分けました。いわゆるヒストリカル系の録音は好みもありますので、演奏はともかく雑音NGって人多いと思うんです。なので今回はここ2〜30年内の録音から紹介することにします。(ヒストリカル系のものはまたそのうち・・)

あとランキング的なものもホントは好きじゃないんですけど、今回はあえて順位付けします。これは個人的な好みなので文句を言われてもお応えできません。

以上をふまえまして、私のオススメベスト3の発表です。

 

ショパンのピアノ協奏曲
ピアノ協奏曲第1番ホ短調 作品11
第1位
フランソワ・デュシャーブル(ピアノ)
ミッシェル・プラッソン(指揮)、トゥールーズ・キャピトール国立管弦楽団

この録音はとにかくバランスが良い。ピアノ、指揮、オケの三位一体とでもいいますか、協奏曲の醍醐味を凝縮したような1枚。ピアノの技術、オケの工夫とどれを取っても文句のつけようのない素晴らしい内容で、こういうのを奇跡的な出会いとでもいうんでしょうか。個性とかいろんなのを突き抜けてて、聴いた後うなります。

第2位
ヤヌシュ・オレイニチャク(ピアノ)
グジェゴシュ・ ノヴァク(指揮)、シンフォニア・ヴァルソヴィア

オレイニチャクの老獪な妙技というか(失礼)、技術と芸術の高い融合とでも言いますか、そういうもので溢れています。オケのシンフォニア・ヴァルソヴィアは非常に素晴らしく、ショパンをやらせたら世界一のオケでしょう。ショパンへの理解度が一段レベルが違う。

第3位
ピオトル・パレチニ(ピアノ)
イェジー・マクシミウク(指揮)、シンフォニア・ヴァルソヴィア

いわゆるエキエル版による最初の録音になるのかな?パレチニはルービンシュタイン、アルゲリッチと並んでショパンのピアノ協奏曲を多く録音してる人です。演奏はとにかく楽しい。はっちゃけてます。エキエル版云々というより音楽を楽しむ気持ちみたいなものを感じて聴くとハッピーになれるかも。

 

ピアノ協奏曲第2番ヘ短調 作品21
第1位
エヴァ・クピーク(ピアノ)
スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ(指揮)、ザールブリュッケン放送交響楽団
クピークのピアノ演奏は地味なんだけどスクロヴァチェフスキのショパン音楽への愛情が深く感じられ、トータルでバランスの良い内容になってます。第3楽章はオケをアレンジしてるので好みは分かれるかもですが、それをさっ引いても全体の完成度が高く、純粋に良い音楽に仕上がってる。

第2位
エマニュエル・アックス(ピアノ)
ユージン・オーマンディ(指揮)、フィラデルフィア管弦楽団
アックスはクライネフ、オルティスと並ぶ世界3大美音の持ち主の一人(と、私が勝手に呼んでいる)。この美音というのは持って生まれた才能みたいなもので、努力して出せるとかそういうんじゃありません。オーマンディ&フィラ管という手堅い伴奏をバックにアックスの美音をこれでもかってくらい堪能できる1枚。

第3位
中村紘子(ピアノ)
ギュンター・ピヒラー(指揮)、オーケストラ・アンサンブル金沢
ネットではどうもアンチ中村というかこの人を薦めると無条件で叩かれる風潮があるんでどうしようか迷ったんですが・・まあ一回聴いてみて下さいよ。ライブだと名盤もいろいろありますが、オケを向こうに回して堂々と渡り合うピアノは中村紘子の真骨頂。オーケストラ・アンサンブル金沢の出来も素晴らしいので食わず嫌いで聴かないのはホントもったいない。

 

参考資料:
Chopin PianoConcerto discography(管理人所有ディスクの一覧です)
kobakoshiブログ(管理人が以前書いた感想をアップしてます)
バカっ振り視聴記(こちらも同じ感想ですが、指揮者メインで書いてます)

 

   

木下 淳 ミニ・ピアノ・リサイタルを聴いて

8月2日、有楽町の松尾ホールに木下淳さんのコンサートを聴きに行ってきた。
木下さんはアマチュアピアニストだが2009年にワルシャワで開催された「第1回アマチュアのためのショパン国際コンクール」に出場し入賞を果たした実力の持ち主。ラ・フォル・ジュルネでも演奏するなどアマチュアながら国内外で活躍している。
今年の9月に開催される2回目のコンクールにも出場が決まっており、今回の演奏会もオール・ショパンプログラムとなった。

全体的な仕上がりについては、木下さんもまだいろいろ試行錯誤してるようなところもあったようなので、細かい部分についてはあえて触れないでおこう。
木下さんの特徴は、マットなトーンの中にニュアンスをつけるのがとても上手い。分かりやすく言うとモノクロの世界にそっと色をさせる、いわゆるセンスのいいピアニストなのだ。その特徴はプログラム前半のマズルカやアンコールで弾いたノクターン、ワルツなどで活きる。
コンクール用のプログラムとなると、どうしてもいろんなタイプの曲で組み立てなければならないのでバランスをとるのが難しい。

こういうクラシックコンサート、中でもピアノのようなソロ楽器だと、技術的に表面だけ固めて中身のない演奏を聴かされることほど苦痛な事もない。
今回木下さんは曲によって、または曲の部分で、いろいろやろうとしているのがしっかり伝わってきて、最後まで飽きることなく聴くことができた。木下さんのことだから9月に向けてしっかり仕上げられると思うので心配はないだろう。最後に、一つだけ気になったことがあったのでメモ代わりに。作品30のマズルカのような個性的な解釈とは反対に、最後のポロネーズはオーソドックスな解釈で(これ以外の弾きようのない曲ではあるが)方向性がそれぞれあさってを向いてるように感じた。
第2回大会は日本から木下さん以外の人も出場されるようなので、みなさんがんばって欲しい。木下さんはその中でもリーダー格としてみなさんを引っ張られるだろう、活躍を期待している。

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